外壁の防水塗装とは?
重要性や注意点、使用する塗料などを解説

INDEX目次

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「外壁の防水塗装について知りたい」「外壁にひび割れがあるけど大丈夫なのだろうか」という人も多いのではないでしょうか。

建物の外壁は、紫外線や雨風に晒されることで徐々に劣化します。

劣化が進みひび割れや壁の剥離が発生すると、隙間から雨水が侵入し建物の腐敗につながることもあります。

外壁の劣化や雨水の侵入を防ぐために役立つのが、外壁の防水塗装です。

ただし、防水塗装に使えるひび割れの大きさに限度があったり、十分なコーキングが必要だったりと注意点もあります。

そこで本記事では、外壁の防水塗装の概要から塗装の重要性、注意点、塗料の種類、費用などを詳しく解説します。

 

 

01 外壁の防水塗装とは?

外壁の防水塗装とは、一般的に防水性能が高い塗料を使用した外壁の塗装工事のことを指します。

そもそも建物の外壁工事には、塗装工事と防水工事の2種類があります。塗装工事は外壁に塗料を塗布する工事を指し、防水工事とは屋上やバルコニーにウレタン防水などを塗布する工事のことです。外壁に塗布する塗料のなかには、防水塗料という明確な区分が存在しないため工事が2種類に分かれています。

防水塗装で重要なのは、外壁に発生するひび割れへの対応です。外壁はひび割れにより雨水が浸入しやすくなるため、そのひび割れに対処できる強い弾性のある塗料を使用することで、効果的な防水性能を発揮します。この弾性塗料は、外壁の動きに合わせて伸び縮みする特性を持っているため、建物を長期的に保護できるのです。

 

 

02 外壁の防水塗装の重要性

コンクリートの壁

外壁の防水塗装には、建物を保護する上で重要な以下の3つの役割があります。

●外壁の劣化・破損を防ぐ

●雨水の侵入を防ぐ

●建物の腐敗や耐久性低下を防ぐ

それぞれ詳しく解説します。

外壁の劣化・破損を防ぐ

建物の外壁に防水塗装を施すことで、紫外線による劣化や雨風による浸食から効果的に保護されます。特にコンクリートやモルタルで作られた外壁は、適切な防水処理を行わないとひび割れや剥離などの深刻な損傷が発生しやすい性質を持っています。

防水塗装を行うことで、外壁材が湿潤状態と乾燥状態を繰り返すサイクルが大幅に減少するのです。このサイクルの抑制は、外壁材自体の劣化を防ぐ重要な要素となっています。結果として、建物の寿命を延ばすことにつながります。

雨水の侵入を防ぐ

防水塗装に使用される弾性塗料は、ゴムのような弾力性を持っている 、一般的な塗料と比較して格段に高い伸縮性を備えています。この特性により、外壁にわずかなひび割れが発生した場合でも、弾性塗料の塗膜がその動きに合わせて伸び縮みするため、塗膜自体の割れを防ぐことが可能です。

優れた特性によって、外壁への雨水の侵入の防止につながります。一般的な塗料では対応できないような外壁の細かな動きにも柔軟に対応できる点が、防水塗装の大きな強みといえます。

建物の腐敗や耐久性低下を防ぐ

外壁の 割れは、たとえ幅がわずか0.2mm以上であっても、建物の内外をつなぐ経路となってしまい、雨水の侵入リスクを高めてしまいます。外壁や塗膜にひび割れが発生すると、そこから建物内部へ雨水が浸入して建物の腐朽や腐食を引き起こし、耐久性の低下を招く原因となるのです。

防水塗装に使用される弾性塗料は、グレードによって性能に差はありますが、最も性能の高いものであれば1mm程度の外壁のひび割れにも追従できます。これにより雨水の浸入を防ぎ、建物の雨漏りリスクを大幅に軽減することが可能です。

 

 

03 外壁の防水塗装の注意点

防水塗装を行う際には、以下の3つの重要なポイントに注意を払う必要があります。

●大きなひび割れの処置は難しい

●塗料によっては性能を発揮できない下地もある

●コーキングを十分に施す

それぞれ詳しく解説します。

大きなひび割れの処置は難しい

防水塗装だけでは、大きなひび割れへの対処はできません。特に幅が0.2mm以上のひび割れについては、塗装工事を始める前に適切な補修作業を行う必要があります。ただし、使用する塗料の種類によっては、幅1mmまでのひび割れであれば対応できる可能性もあります。

このため、ひび割れの状態を事前に詳しく調査し、適切な補修方法を選択することが重要です。単に防水塗装を施すだけでは、根本的な問題解決にはならない場合があることを理解しておく必要があります。

塗料によっては性能を発揮できない下地もある

下地の状態や種類によっては、防水塗装の効果が十分に発揮されないケースがあります。古い塗膜が残っている場合、新しく塗布する塗料との相性が悪く、塗膜が剥離してしまう可能性があるのです。

具体的な例として、モルタル材には防水塗料が適していますが、窯業 系サイディングとは相性が悪いことが知られています。このように、下地の材質によって適切な塗料を選択することが、防水性能を最大限に引き出すポイントとなります。

コーキングを十分に施す

防水性能を確実に確保するためには、適切なコーキング処理が不可欠です。特に目地やサッシ周り、配管貫通部などの接合部には細心の注意を払う必要があります。経年劣化したコーキングは必ず打ち替えが必要となりますので、定期的な点検と適切な時期での交換が重要です。

 

 

04 外壁の防水塗装を行うタイミング

建物の寿命を延ばすためには、外壁の防水工事(防水塗装工事、外壁塗装工事)を定期的に行うことが重要です。工法や使用する塗料によって耐用年数は異なりますが、一般的な外壁の防水工事のタイミングは10~15年を目安とします。

ただし、この年数に達していなくても、雨漏りや大きなひび割れが発生した場合は、早急に補修を含めた防水工事を検討する必要があります。建物の状態を定期的に点検し、適切なタイミングで防水塗装を実施することで、建物の長寿命化を図ることが可能です。

 

 

05 外壁の防水塗装に使用される塗料の種類

塗装用ローラーと白い塗料のバケツ

防水塗装に使用される塗料には、以下の4種類があります。

●アクリル塗料

●ウレタン塗料

●シリコン塗料

●フッ素系塗料

それぞれ詳しく解説します。

アクリル塗料

アクリル塗料は、扱いやすく発色が良いという特徴を持ち、さらに価格が比較的安価であることから、以前は外壁塗装の主流となっていました。しかし、耐久年数が5〜6年ほどと短く、ほかの種類の塗料と比較して耐久性が劣ります。このため、現在ではあまり使用されない傾向にあります。

ウレタン塗料

ウレタン塗料は、弾力性があり、素材への付着性が高いという特徴を持っています。しかし、水との反応性が高く、年数が経過すると汚れが目立ちやすくなるという欠点があります。耐用年数は最大でも10年程度です。

シリコン塗料

シリコン塗料は現在、最も利用頻度の高い外壁塗料の一つです。耐用年数は7年から10年程度で、アクリルやウレタンの塗料と比較すると価格は高めですが、その分 耐久性も高いという特徴があります。

フッ素系塗料

フッ素系塗料は、耐久性と耐水性の両面で高い性能を発揮し、耐用年数は約20年と非常に長期間です。主にビルなど大型建築物に使用されることが一般的ですが、近年では住宅用としても採用されるケースが増えています。

 

 

06 外壁の防水塗装の仕上げ方法

防水塗装の仕上げ方法には、主に以下の3種類があります。

●単層弾性仕上げ

●複層弾性仕上げ

●微弾性塗料仕上げ

それぞれの特徴を詳しく解説します。

単層弾性仕上げ

単層弾性仕上げは、下塗りを1回行い、上塗りを2~3回の工程で仕上げる方法です。他の仕上げ方法と比較して、塗装の工程が少ないのが特徴です。単層弾性は、厚みを付けて弾力性を出す工法で、厚塗りを行うことでひび割れへの耐性は向上しますが、複層弾性仕上げと比べると弾力性は3分の2以下まで低下します。

複層弾性仕上げ

複層弾性仕上げは、下塗り1回、中塗り2回、上塗り2~3回の工程で仕上げる方法です。単層弾性仕上げよりも工程数が多いため、塗膜に十分な厚みを持たせることができ、高い防水機能を発揮できます。ただし、複層弾性仕上げは材料費に加えて人件費もかさむため、工事費が高額になる傾向があります。

微弾性塗料仕上げ

微弾性塗料仕上げは、下塗り(微弾性フィラー)1回、上塗り2回の工程で仕上げる方法です。「微弾性フィラー」と呼ばれる伸縮性のある下塗り材を使用するのが特徴で、高い粘度を持つ下塗り材により、小規模なひび割れであれば即座に埋めることが可能です。

 

 

07 防水塗装の性能を十分に発揮させるポイント

防水塗装の性能を最大限に引き出すためのポイントは、以下の2点です。

●基準塗布量を守る

●乾燥時間を守る

それぞれ詳しく解説します。

基準塗布量を守る

防水塗料の性能を十分に発揮させるには、まず基準塗布量を守ることが大切です。塗膜の厚みが十分でないと、塗料が伸びずに切れてしまいます。1 あたりどのくらいの量を塗布するのか、塗料メーカーが基準を定めているので、それを満たすようにします。

いくら表面上きれいに仕上がっていても、基準が満たされていないと耐久性が十分でないこともあるので注意しましょう。

乾燥時間を守る

もう一つ大切なのは、乾燥時間を守ることです。塗料は空気中に溶剤が揮発(液体が気体になる現象)して、外壁を守る塗膜となります。十分に乾燥時間を設けないと、硬化不良を起こす可能性もあります。

そのため、塗料メーカーは乾燥時間に関しても「工程間を〇〇時間以上確保すること」というように基準時間を定めているのです。塗料は乾燥時間を十分に確保できないまま2・3度塗りをすると、硬化不良を引き起こす原因になる可能性があります。硬化不良を引き起こすと、防水塗料がその性能を発揮できなくなるので注意が必要です。

 

 

08 外壁の防水塗装の費用

一般的な一戸建ての防水塗装費用について具体的な相場を見ていきましょう。シリコン塗料を使用した一般的な外壁の塗装工事では、1平方メートルあたり 程度の費用がかかります。さらに、防水性能の高い塗料を使用した場合は、1平方メートルあたり5000〜6000円程度まで上昇します。

ただし、外壁塗装工事には足場の設置費用や人件費なども必要となります。そのため、一般的な一戸建て住宅の場合、トータルで120〜130万円程度の費用が必要となることを想定しておく必要があります。

 

 

09 まとめ

外壁の防水塗装は、建物を長期にわたって保護するために欠かせない重要な工事です。適切な塗料の選択と施工方法の決定、そして定期的なメンテナンスを行うことで、建物の寿命を延ばし、資産価値を維持できます。

特に重要なのは、建物の状態や予算に応じて最適な塗料と工法を選択することです。また、施工前の下地処理や補修作業、そして定期的な点検と維持管理を適切に行うことで、防水塗装の効果を最大限に引き出すことが可能です。建物を長く快適に使用するために、計画的な防水塗装の実施を検討してみましょう。