非常時や災害時の電源確保に!家庭用蓄電池の選び方や効率的な使用方法を解説
- 防災
INDEX目次
Webライター
木下しずく
お声がけいただいたテーマで執筆活動を行っている、駆け出しのライターです。 様々な情報が溢れる中、ここが知りたい!のポイントを押さえた記事で、皆さんの日常や暮らしがより充実するお手伝いをしたいと思っています。
ここ数年、今までに経験したことのないような、深刻な被害をもたらす自然災害が増えています。
そういった災害時の停電リスク対策として、また、節電や省エネに関する意識の高まりからも非常に注目を集めているのが「蓄電池」です。
本記事では、非常時・災害時のライフライン確保の手段として、家庭用蓄電池の種類や選び方、効率的な使用方法をまとめました。
01 蓄電池とは
蓄電池とは、電気を蓄えて、必要なときに使用することができる電気エネルギー貯蔵設備です。
スマートフォンやノートパソコン、モバイルバッテリー、再生可能エネルギーシステムなど、さまざまな場面で広く使用されており、エネルギーの効率的な貯蔵と再利用を可能にしています。
乾電池など、充電・再使用できない使い切りタイプの電池を一次電池と呼び、蓄電池は、何度も充電・使用できる電池のため、二次電池と呼ばれています。
まずは、蓄電池の仕組みや、蓄電システム、蓄電システムの種類についてご紹介します。
蓄電池の仕組み
蓄電池の内部には、電解液と正極と負極の2つの電極があります。
電気を起こすにはこの電極と化学反応が必要となり、プラスからマイナス極へ電子が移動した際に電気エネルギーが発生します。
蓄電池は、蓄電池内部の化学反応により電気の流れを変え、電気の蓄電と放出を繰り返せる仕組みとなっています。
蓄電システム
蓄電池は太陽光発電や電力会社からの電気を貯めることができます。しかし、蓄電池のみを設置しても、使用はできません。なぜなら、蓄電池で扱える電力が直流電力であるのに対し、家庭で使用する電力は交流です。そのため、「交流電力⇔直流電力」へ変換が必要となり、その機能を担うのがパワーコンディショナー(通称:パワコン)です。
蓄電池に電気を貯めたり、その貯めた電気を家庭で使用できるようにしたりするための必須の設備です。また、変換器としての役割以外にも電流や電圧を最適な状態に調整してくれ、電力の安定化を図ってくれる役割もあります。
パワコンと家庭用蓄電池を1セットにしたものを「蓄電システム」と呼び、ご家庭に蓄電池を導入する場合、一般的には蓄電システムを導入します。
パワーコンディショナーの種類:単機能型とハイブリット型
蓄電池には欠かせないパワコンには、単機能型とハイブリッド型の2種類があります。家庭用蓄電池購入の際には、そのどちらかを選択する必要がありますので、それぞれ特徴やメリット、デメリットを確認しておきましょう。
●単機能
単機能型パワコンであれば、太陽光発電を設置しなくても蓄電池単体で運用できます。太陽光パネルと蓄電池のそれぞれのパワコンが独立しているため、太陽光発電のパワコンの交換設置も不要です。また、太陽光パネルとの相性を気にする必要もありません。
価格もハイブリッド型パワコンに比べれば安いので初期費用を抑えたい方はお勧めです。
ただ、単機能型パワコンのデメリットといえるのが、変換時に起こる電力のロスです。電気は直流・交流間の変換の度に、電力の一部が失われてしまいます。そのため、太陽光発電を導入している場合に単機能型パワコンを設置すると、パワコンの数が2台に増加し、電力の変換回数が増えます。結果的に電力のロスが発生してしまい、使える電気が少なくなってしまうのです。
少しでも多くの電気を使いたい場合は、ハイブリッド型パワコンを選択肢に入れましょう。
また、太陽光発電とは独立システムとなることから、新たに設置のためのスペース確保も必要となります。
●ハイブリッド型
ハイブリッド型パワコンは、太陽光発電システムを同時設置、もしくは既にお持ちのご家庭を前提とします。
太陽光パネルと蓄電池で1台のパワコンを共有使用できるため、電気を太陽光パネルから直接蓄電池へと直接送る事ができ、電気の変換ロスが少ないため、最終的に使用できる電力は多くなることが最大の強みです。また、日中は太陽光発電の電気を使用しつつ、ハイブリッド型パワコンを介して蓄電池へ充電することが可能です。蓄電池へ充電したあとは、太陽光発電が発電できない夜間に貯めた電気を使えます。
単機能型パワコンのみであれば、停電で電力会社からの給電がストップすれば蓄電池へ電気を貯めることができませんが、ハイブリッド型パワコンであれば、太陽光発電との連携により多くの家電を長時間使うことができるため、停電時でも安心です。
また、太陽光パネルと蓄電池のパワコンが一体化しているため、設置スペースは少なくて済みます。
ですが、既存の太陽光発電のパワコンの撤去費用が掛かること、単機能型に比べて高額という点はデメリットとなります。
02 家庭用蓄電池の選び方
蓄電池は、使用場所・規模・容量によって家庭用蓄電池・産業用蓄電池に区分されています。
一般住宅向けに設計・開発された蓄電池である家庭用蓄電池は、電池の仕組みや、蓄電容量・サイズ、設置場所、停電時の稼働方式の違い等により、様々な種類に分類されます。
ここからは、非常・防災対策を目的として家庭用蓄電池を設置する場合の選び方をご紹介します。
使用したい家電製品の電圧(100V・200V)から決める
停電時にどの家電を使用したいかを考えます。
子どもが幼いまたは高齢の両親がいるためエアコンは必須、食事は温かいものを食べたいのでキッチンだけは電気を使えるようにしたい…といったように、生活状況により使用したい家電は異なってくるかと思います。
日常生活で使用する家電製品の電圧は、100Vと200Vに分かれます。
スマートフォンやパソコンの電圧は100Vですが、IHクッキングヒーターやエアコン、電子レンジや冷蔵庫などは、200Vの電圧が必要です。
従って、停電時にエアコンや電子レンジを使用したい場合は、200V対応の蓄電池を購入する必要があります。
使用したい場所で決める
停電時において、最低限キッチンだけは電気が使いたい、と考える方もいれば、通常通り生活したい、と考える方もいらっしゃるでしょう。
家庭用蓄電池には、全ての部屋に電気を供給できる「全負荷型」と、あらかじめ指定しておいた部屋にだけ電気を供給できる「特定負荷型」の2タイプがあります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
●全負荷型
「全負荷型」の家庭用蓄電池は、蓄電池に貯めた電気を家中に供給できるタイプです。
真価を発揮するのは停電時で、電力がある限りいつもと変わらず普段通りの生活が可能です。
また、200Vの電圧に対応している点も大きなメリットで、停電時でもエアコンやエコキュート、IHヒーターが使えるので、オール電化の住宅に住んでいる方や、お子様やご両親と同居されていて、いざという時の備えを万全にしたい、しっかり安心を備えたい方におすすめです。
ですが、特定不可タイプに比べて消費電力が多く、使用時間が短い(使用する家電や部屋を限定することで対策可)、初期費用が高くなる、サイズが大きいため戸外設置タイプが多い、といったデメリットがあります。
●特定負荷型
「特定負荷型」の家庭用蓄電池は、停電時にあらかじめ指定しておいた一部の部屋・コンセントの電気のみ使用することができます。電気を使用する範囲が限定的なため、全負荷型よりも容量は長持ちする傾向にあります。また、全負荷型に比べるとサイズが小さく、室内設置可能なものも多く、価格も抑えることができます。
例えば、非常時・停電時には最低限の家電さえ使えれば良い、というご家庭は、200Vの電圧に対応した特定不可型を設置して、リビングを停電時に使用する部屋として指定しておきます。
そうすることで、リビングのエアコン、冷蔵庫、照明、テレビといった必要最低限の家電は使用することが可能です。ただ、別の部屋の照明やテレビ等は使用できませんし、洗濯機や浴室乾燥機が使えないので、多少の快適さは犠牲にすることは否めません。
最近の家電は200Vのものが多く、特定不可型は200V対応のモデルが限られているため、充分に検討が必要です。
「容量」と「出力」から選ぶ
非常時・停電時に何の家電をどの程度使用するかを考えるには、「容量」と「出力」にも注目する必要があります。
「容量」─家電を動かせる長さから決める
「容量」は、電気を貯められる量をkWh(キロワットアワー)という単位で示したもので、「1時間に貯められる電力量」を示します。㎾は電力の大きさを表し、hは時間を表します。
「1kWh=1000Wh」であり、カタログ等には、定格容量や実効容量という記載がしてあります。
●定格容量・・・理論上の最大の貯蓄電力量
●実効容量・・・使用環境下において、実際に貯蓄可能な電力量
実際の使用時は、バッテリーの劣化防止や安全性確保等の理由から、実効容量を設定して運用します。そのため、蓄電池の蓄電容量は、実効容量で計算をする必要があります。
例えば、250Wの冷蔵庫は、1000Wh÷250W=4となるため、容量1kWh(=1000Wh)の蓄電池では4時間稼働できる、という計算になります。
では実際、停電時にどのくらいの容量を必要とするかを把握してみましょう。
Step1.使う家電のリストアップ
必要最低限の生活ができれば良いのか、普段通りの生活を行いたいのかにより、想定される消費電力は大きく異なります。
Step2.使う家電の消費電力を調べる
実際値はモデルスペックや使用年数、使用環境などにより異なりますが、多くの家庭で使用する一般的な家電の場合、おおよその1時間あたりの消費電力は以下になります。
●照明:20Wh~100Wh
●冷蔵庫:100Wh~150kWh
●電子レンジ:200Wh~1.5kWh
●エアコン:500Wh~3kWh
●テレビ:40Wh~500Wh
●スマートフォンの充電:7Wh~15Wh
また、蓄電池は一般的に10~15年が耐用年数といわれていますので、子どもの成長やご自身、ご両親が同居されている場合はその年齢等も鑑み、検討する必要があります。
Step3.停電期間のシミュレーション
停電している期間を想定してみましょう。落雷による停電の場合、大概すぐに復旧しますが、地震や台風・大雨などの災害による停電では、状況により復旧まで1週間以上かかる場合も考えられます。
Step4.必要な蓄電池の容量を計算する
停電時に使用したい家電と消費電力、想定される停電期間を確認すると、電力と停電期間から停電中に必要な電力が計算できます。
「出力」─一度に引き出せる電力量から決める
次に出力を見ていきましょう。カタログには「定格出力」という記載がしてあります。
定格出力とは、蓄電池から一度に引き出せる電力量を意味します。消費電力量が大きい家電を同時に使用したい場合は、出力値にも注目すると良いでしょう。
出力の数値が大きいほど、一度に多くの家電を動かすことができ、出力の数値が小さいと一度に使える家電の量が限られてきます。
例えば、前述した「容量」が大容量タイプの蓄電池であっても、「出力」の数値が小さい場合は、一度に使える電気(=家電)の量は少しです。
蓄電池を購入する際は、「どの家電を動かすか」「どの家電を同時に使用するか」をあらかじめ想定して、出力がどのくらいあれば足りるか計算しておくと良いでしょう。
停電時に使用することが想定される家電には、以下のような種類があります。
●LED照明/240W(40W×6時間)
●携帯充電器/150W(15W×10時間)
●TV/1,000W(200W×5時間)
●ノートパソコン/150W(30W×5時間)
●洗濯機/210W(70W×3時間)
●炊飯器/2,500W(1,250W×2時間)
●冷蔵庫/約750W(年間275kWh÷365日)
※上記は24時間のうちいずれかの時間で使用することを想定しています。(すべてを同時に使用する訳ではありません)
※実際の消費電力は、使用する家電やスペック、使用時間などによって異なります。
上記で想定している家電の合計消費電力は「5,000W(5.0kW)」となります。仮に容量「5.0kWh」の「全負荷型」蓄電池を導入した場合、ちょうど1日(24時間)分の電力はまかなうことができる計算になります。
また、上記でご紹介した例よりも使用家電数や使用時間を減らすことで、さらに長い時間を蓄電池によってカバーできるようになります。
このように、使用電力を計算することで必要な電力以上の容量を持った蓄電池を導入することができます。
03 サイズや設置方式から選ぶ
蓄電池は容量が多ければ多いほど、サイズも重量も大きくなる傾向にあります。
仮に容量が5kWh、10kWh、15kWhとすると、設置面積・重量は、それぞれ約0.1平方メートル・約70kg、0.18平方メートル・約120kg、約1.2平方メートル・約240kgとなります。
また、蓄電池は屋内用設置と屋外用設置の2タイプがあります。
屋内用の蓄電池は天候の影響を受けませんが、容量が大きい場合、外寸も重量もアップするため、それなりのスペース及び床の強度が必要となります。
劣化を避けるために、高温多湿になりにくい場所であることも必要です。
またある程度の運転音(約35db〜40db)がでるため、夜中等に周りが静かだと気になる方もいらっしゃるでしょう。
屋外用の蓄電池は設置場所の選択肢は多く運転音も気にする必要はあまりありませんが、天候の影響を受けるため、屋内用に比べて劣化が早まります。日光が直接あたらず、風通しがよく、高温多湿になりにくい場所への設置が必要です。
コストパフォーマンス(価格)も考慮する
非常時・停電時の防災対策を目的としての蓄電池購入の場合は特に、容量や出力が大きい蓄電池を購入したほうが安心と考える傾向があります。ですが、容量が大きくなれば当然、蓄電システムの外寸は大きくなりますし、費用も高額となってきます。
大きい容量の蓄電池を導入して安心感を得ても、それによって月々のローン返済が負担となってしまうようでは、意味がありません。
自宅に見合った容量で適正なコストバランスになる蓄電池を選ぶのも、蓄電容量の決め方のひとつです。
04 効率的な使用方法
非常時・停電時対策だけではなく、日々の暮らしでも恩恵を受けられるような使用法をご紹介します。
太陽光発電との併用
日中は太陽光発電システムの電力を使用し、発電不可能な夜間は蓄電地に蓄えた電力を使用することで、太陽光発電システム単独の場合よりも更に光熱費を削減することができます。
また、昼間発電して蓄電池に貯め切れなかった分は売電することも可能です。
夜間の割安電力を買電できる電力プランへ変更
夜間の割安電力を買電し、蓄電池に貯め、その電気を昼間に使用するようにすれば、今までと同じ電力使用量だったとしても電気代の節約が可能となります。
05 まとめ
蓄電池は停電時の電力供給の確保となるため、生活被害を最小限に抑えるための、非常に重要なリソースであると言っても過言ではありません。災害時は停電になることも少なくなく、生活の要である電化製品が使用できない状況は、多くの不安・不便を感じるはずです。
蓄電池購入は、初期費用が高額という点が最大のデメリットです。そのため、国や地方自治体の補助金制度を利用することも、念頭に置いておきましょう。
いつ来るかわからない災害や非常時にただ不安を持つのではなく、ご自身の家庭に最適な蓄電池を購入することで対策を行い、ライフラインの確保を日頃から意識してみてください。