住まいの「断熱」と「換気」は、
健康にどんな影響がある?

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「朝寒くて布団から出たくない」「暖房を入れているのに足もとがスースーする」、これは住まいの断熱性が足りていないのかもしれません。断熱性が低いと冷暖房費がかさむだけでなく、快適な場所から動くのが面倒になって、家事や雑事がなかなかはかどらないもの。さらに、住まいの室温や空気は、健康とのかかわりがあるとも言われています。そこで今回は、暖かい家がもたらす影響や住まいの換気の重要性について紹介します。

 

01 日本の家は寒い。「冬の室内を18℃以上に」とWHOが勧告

冬の室温は何℃を目安にすればいいのでしょうか? WHO(世界保健機関)では「住まいと健康に関わるガイドライン」で、寒さによる健康影響から住まい手を守るために「冬の室内温度を18℃以上にする」と強く勧告しています。

室内温度18℃というのは少々低めな気がしますが、クリアできていない実情があります。国土交通省の調査によると、在宅中の居間の平均室温について、「冬18℃以上」だった都道府県は、4つのみでした。日本の家の暖かさは、世界基準からまだまだかけ離れていると言えそうです。

※出典:国土交通省「断熱改修等による居住者の健康への影響調査 第6回報告会」2022年(データ数が少ない3県は集計から除外)

 

02 室温差が少なくなれば、入浴事故のリスクが減る

室内から脱衣所、浴室での温度差からくる血圧の変化冬に寒い家がもたらすリスクとして、おなじみなのが「ヒートショック」です。これは、温度差によって血圧が急激に変動し、失神や脳卒中、心筋梗塞などを引き起こすこと。暖かい部屋と寒い部屋の移動を繰り返したり、寒い脱衣室から急に熱いお風呂に入ったりすると血圧が急変し、めまいやふらつき、ときには意識を失って浴槽内でおぼれてしまうこともあります。

消費者庁が発表した「平成28年東京消防庁 救急搬送データ」によると、高齢者の「おぼれる」事故は11月~3月の発生が約7割で、冬場に集中しています。高断熱にして室温差を減らせば、思いも寄らない入浴事故を防ぎやすくなると言えます。

※出典:消費者庁の資料

 

03 冬暖かい家にすると、健康面でも期待できる?!

気温40度近くに迫る酷暑や、冬の寒暖差。近頃の気候変動による極端な気温は、身に堪えるものです。気温と同じように、室温も私たちの健康に影響があるのでしょうか?

国土交通省が実施した「断熱改修等による居住者の健康への影響調査」によると、断熱改修をすると血圧が下がる、居間が18度以上の住宅の方が心電図異常所見や総コレステロール値のリスクが低い、床近傍室温16.1℃以上の住宅の方が喘息の子どもが少ない、といった報告があります。高断熱な家は、健康面での効果にも期待が持てそうです。

もちろん、高断熱住宅にしたからといって症状が出ない、改善するというわけではありませんが、健やかに過ごせる環境づくりのひとつと言えるでしょう。

 

※出典:国土交通省「断熱改修等による居住者の健康への影響調査 中間報告(第3回)」2019年

※出典:国土交通省「断熱改修等による居住者の健康への影響調査 第6回報告会」2022年

 

04 空気の汚れは気がつきにくい。「24時間換気システム」を正しく使おう

室内の空気は一見きれいに見えても、生活するほどに汚れていきます。換気不足によって、ハウスダスト、湿気、化学物質、二酸化炭素、花粉などが増えてしまうと、アレルギー疾患やシックハウス症候群の一因になることもあります。快適な空気に包まれて健康的に暮らすためには、室温だけでなく「換気」も大切です。

築20年以内の家であれば、2003年の建築基準法改正によって「24時間換気システム」の設置が義務化されているので、窓を開けていなくても室内の空気が入れ替わります。このシステムが正しく機能すれば、「約2時間で室内すべての空気を入れ替え可能」です。電気代がもったいない、ヒンヤリするからといって切らず、システムは点けっぱなしにしておきましょう。

 

05 「高気密高断熱」な住まいには、適切な「換気」がマスト!

夏涼しく冬暖かい住まいにするには、「高断熱」と同時に、熱が逃げてしまうすき間をなくす「高気密」が欠かせません。高気密化したら、汚れた空気・湿気を排出し、新鮮な空気を取り入れるための適切な「換気」が必要です。

高気密にすると空気がもれなくなる分、「24時間換気システム」が計画通りに稼働するというメリットもあります。住宅性能向上のためには「高断熱・高気密・換気」の3つを合わせて考えてください。

「24時間換気システム」には3つのタイプがあり、外の空気を取り込む「給気」、室内の空気を外に出す「排気」の方式が違います。住宅で多く使われるのは第3種で、つづいて第1種の方式です。

1種換気

給気・排気ともに、換気扇を使って強制的に換気するシステムです。安定した換気効果が望めますが、コストは割高です。

2種換気

給気は機械的に行って、排気口から自然に排気するシステム。室内の気圧が高くなり汚染した空気が入りにくいため、手術室や研究所のクリーンルームなど特殊な環境で使用されます。

3種換気

給気口から自然に給気し、排気は換気扇を使って強制的に行うシステム。すべての居室に給気口が必要です。

24時間換気システムで換気をすれば、やはり一定程度は室内の温度が逃げてしまいます。熱損失が気になるなら、第一種換気に熱交換器を備えた「熱交換型換気」に注目してみましょう。排気をする時に室内の熱を回収し、給気した空気に戻すので、冷暖房費の節約につながります。

05 長い時間を過ごす家。「心と体が喜ぶかどうか」もカギに

いかがでしたか?住宅性能の向上や省エネ化は、地球環境や光熱費の課題解決だけではありません。夏涼しく冬暖かい家にすると、薄着で過ごせたり、厚手の布団を手放せたりして、日常の小さなストレスが減るのではないでしょうか。住まいのデザインも大切ですが、これからの家づくりでは「心と体が素直に喜ぶ環境づくり」にも少し注視してみませんか。