住まいの「断熱」を高めるメリットと、気をつけたいことは?

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住宅性能の話は専門性が高く、つい建築会社にお任せしたくなります。でも、住んでからの満足度に直結するのがこの基本性能。とくに「断熱性」は暑さ・寒さや光熱費に影響するため、優先順位を下げないようにしましょう。国では脱炭素社会に向け、住宅の高性能化を加速度的に進めており、2025年からの新築住宅は「省エネがスタンダード」に!そこで今回は、高断熱のメリットや断熱方法、断熱レベルの目安などを解説します。

 

01 日本各地の暮らしが快適になる。 高断熱な家のメリット

「高断熱住宅って寒冷地の仕様でしょ?」と思っていませんか。夏の気温が日本各地で40度近くに達する今、冷房効率を上げるためには「夏の断熱」も欠かせない性能になってきました。まずは断熱のメリットとデメリットを紹介しましょう。

メリット1 冷暖房費がダウン

光熱費が上がっている今こそ実感できるのが、このメリット。熱の出入りを抑えることができるので、夏や冬の光熱費を節約しやすくなります。冷暖房を使う期間の短縮にもつながります。

メリット2 室温ムラが少なく快適

廊下や浴室に出た瞬間、震えるような室温差があると、ヒートショックの原因に。高断熱な住まいは、家全体の温度ムラを少なくすることで、カラダへの負荷を軽減できる点も魅力です。また、エアコン1~2台で大半の暖房をまかなえるケースもあり、暖房機器の数を減らせます。

メリット3 防音性が高まる

断熱性と気密性を高めると、家のすき間が減り、防音性が高まります。窓をしっかり閉めておけば、外部の車の走行音や大雨の音が抑えられ、静かな環境を保ちやすいです。

ただしデメリットも!建築コストがアップ、内部結露に注意

断熱材・サッシの費用や工事の手間がかさむ分、断熱性を高めるほど建築コストは上がります。気をつけたいのが壁内や床下で起こる内部結露。適切な施工と、換気を行わないと内部結露のリスクが上がり、構造材の腐食を進めてしまうことがあります。施工精度の高い建築会社選びが大切です。

 

02 住まいの断熱で、とくに気をつけたいのが「窓」

断熱とは文字通り、熱の移動を防ぐこと。では、住まいの熱はどこから出入りするのでしょうか。

 1位:窓やドア・・・73% 2位:屋根・・・11% 3位:外壁・・・7%

 1位:窓やドア・・・58% 2位:外壁・・・15% 2位:換気・・・15%

(出典:国土交通省 なるほど省エネ住宅 P5)https://www.mlit.go.jp/common/001500203.pdf

窓・ドアから出入りする熱は、なんと夏は7割以上、冬は5割以上!つまり、窓を小さくする、窓の数を減らす、窓のスペックを上げると、断熱に効果的です。

日差しが気になる窓は、「遮熱タイプ」で夏の対策を

窓の断熱性は、ガラスの枚数とサッシ(フレーム)の材質の掛け合わせで決まります。下記の順に断熱性が高くなり、コストもアップすると覚えてください。

サッシ (低)アルミサッシ<アルミ樹脂複合サッシ<樹脂サッシ(高)

ガラス (低)単板ガラス<複層ガラス<トリプルガラス(高)

窓の性能は進化し、複層ガラスの内側に熱の伝わりを抑える金属膜を施した「Low-E複層ガラス」がよく使われています。夏場は日射熱が家の中にこもりやすいので、日差しが気になる場所は「遮熱タイプ」の窓を使ったり、外部シェードを活用したりするのもいいでしょう。

 

03 建物全体の断熱は、「外側から」または「内側から」

断熱工事を施された壁建物全体の断熱は、洋服を着るように、全体を断熱材で包み込んで熱の出入りを防ぐ仕組みです。木造住宅では、2つの断熱工法が代表的です。下記2つを合わせた工法もあります。

充填断熱 柱などの構造材の間に、「内側」から断熱材を充填する工法。外張りよりも安価。

外張り断熱 柱などの構造材の「外側」を、断熱材でくるむ工法。

断熱材の種類もさまざまで、大きくは「繊維系(グラスウール、セルロースファイバーほか)」と「発泡プラスチック系」に分かれます。繊維系は細い繊維内に空気を閉じ込め、発泡プラスチック系は小さな気泡の中に空気を閉じ込めて、断熱性を発揮します。

 

04 断熱レベルが分かるキーワードは、「断熱等級」

断熱が高い・低いはどのように判断すればいいのでしょうか。比較に役立つのが「断熱等級」です。ちょっと専門的な内容になりますが、大まかに把握しておきしょう。

最高グレードだった「断熱等級4」が、2025年にはマストに!

正式には「断熱等性能等級」。品確法で制定された、住宅の断熱性能を分かりやすく表すための基準です。これまでの断熱等級は1~4の4段階でしたが、2022年に等級5~7が新設され、最高等級は7になりました。2025年度には「断熱等級4」の性能がすべての新築住宅に義務化される予定です。

断熱等級の基準として、日本を気候別に8区分した「地域区分」ごとにUA値とηAC値が定められています。この数値を満たすことで等級が決まります。

・UA値:建物からの熱の逃げやすさの指標(外皮平均熱貫流率)

・ηAC値:冷房期の、太陽日射の室内への入りやすさの指標(イータエーシー値、冷房期の平均日射熱取得率)

20244月から「省エネ性能ラベル」の表示がスタート

「省エネ性能ラベル」とは、断熱性能やエネルギー消費性能が家や星マークの数で分かりやすく示されたラベルのこと。2024年度から、住宅の販売や賃貸時にはラベル表示が努力義務となりました。家を買う・借りるときに、住まい手側が選ぶ目安になります。

 

05 「高断熱」と切っても切り離せないのが「高気密」

断熱工法や断熱材の優劣についてさまざまな意見が散見されますが、最も大切なのは「適切に施工されているかどうか?」です。断熱性だけ高めても、住まいにすき間があると熱は逃げてしまいます。部材と部材の間にできるすき間をできるだけなくした「高気密」と「換気」もセットで考えてください。

この気密性は「C値(相当隙間面積)」で表すことができ、数値が低いほど高気密になります。C値は実際に「気密測定」を行って算出するので、施工力を見極めるポイントにも。標準で測定する建築会社もありますので、事前に確認してみてはいかがでしょうか。

 

06 20241月から“省エネ化”しないと、ローン減税が受けられない!

いかがでしたか?国では住宅の高性能化へ急激に舵を切っています。住宅ローンを組んだときに受けられる「住宅ローン控除」についても、2024年1月の入居分から、省エネ基準に適合しないと受けられなくなりました。建築会社を選ぶときには性能面の実績やノウハウもしっかり検討し、理想のスペックの家づくりを叶えましょう。