屋根の構造と部位を理解して、
見積書の内容を把握しよう

INDEX目次

SHARE X facebook

01 屋根の構造に関する重要な用語

青空と屋根

屋根には様々な部位があり、それぞれに専門用語が存在します。これらの用語を理解することで、屋根の構造を正しく把握し、見積書の内容を適切に判断できるようになります。棟や谷、雨樋などの基本的な用語から、ケラバや鼻隠しなど馴染みの薄い用語まで、屋根の構造を構成する重要な部位の名称と役割を学びましょう。また、地域や施工業者によって呼び名が異なる場合もあることに留意が必要です。

1-1. 棟(むね)

棟は屋根の面と面が交わる部分を指し、屋根の形状によってその数や種類が変わります。三角形の二面屋根では頂点部分を棟と呼びますが、四面の寄棟屋根では複数の棟が存在します。主要な棟を主棟や大棟と呼び、その他を下り棟や隅棟と区別することもあります。棟部分には雨水の浸入を防ぐ雨仕舞いが設けられ、金属系の屋根では棟包みと呼ばれる部材が被せられます。棟包みには屋根裏の換気機能も備わっている場合があります。

1-2. 谷(たに)

谷とは、屋根の面と面が合わさって形成される窪んだ部分のことを指します。この箇所には雨水が溜まりやすいため、排水を円滑にするための通水路が設けられています。この通水路は谷樋(たにどい)と呼ばれ、ステンレス、トタン、銅板、ガルバリウム鋼板などの素材が使用されます。谷部分は雨漏りのリスクが高いため、谷樋の腐食や劣化に注意を払い、定期的な点検と適切なメンテナンスが不可欠です。

1-3. 淀(よど)

淀は屋根の端部に設置される部材で、主に2つの役割があります。1つは屋根が風で剥がれるのを防ぐことです。もう1つは雨水の排水性を高めることです。淀の呼び名には地域差があり、鼻桟、唐草、淀貫、淀木などと呼ばれる場合もあります。いずれも屋根の端部に設置される部材であるという点では共通しています。

1-4. 雨樋(あまどい)

雨樋は、屋根から流れ落ちる雨水を効率的に排水するための重要な設備です。軒樋と呼ばれる水平部分で雨水を受け止め、縦樋と呼ばれる垂直部分を通して地面や排水管に導きます。軒樋には適度な勾配が設けられており、雨水が滞留することなく縦樋へと流れるようになっています。一方の縦樋は、雨水を速やかに排出するための役割を担っています。雨樋の材質は耐久性に優れた塩化ビニルが一般的ですが、アルミニウムやステンレスなども使用されることがあります。落ち葉の堆積や詰まりを防ぐため、定期的な点検と清掃が不可欠です。

1-5. 破風(はふ)・破風板(はふいた)

破風は屋根の妻側の端部分を指し、そこに設置される板状の部材が破風板です。破風板の主な役割は、横からの強風や雨を防ぐことにあります。万が一火災が発生した場合にも、破風板が火の回り込みを遅らせる効果があります。そのため、破風板には不燃性や耐火性に優れた素材が用いられることが多くなっています。一般的には、ガルバリウム鋼板やスレート、ケイカル板などが使用されています。適切な破風板の設置は、屋根裏の保護や建物の防火対策として重要な意味を持っています。

1-6. ケラバ

ケラバとは、屋根の端部で雨樋が設置されていない側の突出した部分のことを指します。この部分は外壁よりも外側に張り出しているため、夏場の強い日射しを遮る効果があり、室内への熱の侵入を抑えます。また、外壁への直接的な日光の当たりを和らげることで、外壁の劣化を遅らせる働きもあります。さらに、ケラバの突出した形状により、窓からの雨水の吹き込みを防ぐ役割も果たしています。適切な長さのケラバを設けることで、住宅の快適性と外壁の耐久性の両立を図ることができます。

1-7. 軒天(のきてん)

軒天とは、外壁から突き出した屋根の下面部分のことを指します。この部分には軒天ボードが設置されており、有孔ボードやスリット入りの換気部材が使われることが多くあります。これらの換気部材は、屋根裏に溜まった湿気を外部に排出する機能を持っています。湿気がたまると結露やカビの発生につながるため、軒天ボードによる換気は重要な役割を果たしています。軒天ボードの素材としては、ケイ酸カルシウム板が一般的に使用されています。軒天に染みがあれば雨漏りの可能性もあるので、定期的な点検が必要不可欠です。

1-8. 鼻隠し(はなかくし)

鼻隠しは、屋根の正面側の軒先に設置される部材です。垂木の先端部分を隠すことから名付けられました。主な役割は雨樋を支持することですが、同時に破風板と同様に雨風から屋根裏を保護する機能も持っています。素材は木材や金属板などが一般的に使われ、デザイン性も重視されます。適切に設置されていれば、雨漏りのリスクを低減できる重要な部位です。

1-9. 雨押さえ(あまおさえ)

2階建て住宅において、1階の屋根と2階の外壁が接する箇所には、雨押さえと呼ばれる部材が設置されます。この部分は雨水が外壁内部に浸入しやすいため、ガルバリウム鋼板などの防水性の高い素材を使用して、雨水の侵入を防ぎます。雨押さえは屋根と外壁の境界部分を保護し、建物の寿命を延ばす重要な役割を果たしています。

1-10. 庇(ひさし)

庇は、建物の窓や出入り口の上部に設置される小さな屋根のことを指します。その主な役割は、開口部に雨風が直接当たるのを防ぐことにあります。庇の構造や使用される材料によって、小庇、霧よけ、日除けなど、様々な呼び名があります。建物全体を覆う本体の屋根とは異なり、庇は局所的に設置されることが特徴です。開口部の大きさに合わせて適切な大きさの庇が選ばれ、雨漏りや日射を防ぐ機能を発揮します。

 

02 屋根を構成する部材の専門用語

図面の上に置かれた木造住宅の屋根の骨組み

屋根は複数の部材が組み合わされて構築されています。その中でも特に重要な役割を担う部材が垂木、野地板、防水紙の3つです。垂木は屋根の骨組みとなる棒状の構造材で、頂点の棟から軒まで一定の間隔で設置されます。その上に野地板が渡され、屋根材を敷設する下地となります。さらにその上に防水紙が敷かれ、雨水の浸入を防ぎます。これらの部材が適切に組み合わされることで、丈夫で長持ちする屋根が完成するのです。

2-1. 垂木(たるき)

垂木は屋根の骨格を形作る構造材で、棟から軒に向けて傾斜をつけて設置されます。通常は横幅約45cmの間隔を空けて並べられ、その上に野地板や防水紙、屋根材が載せられる重要な役割を担っています。垂木の強度や耐久性が屋根全体の寿命を左右するため、高品質な材料を使用することが求められます。適切な施工と定期的なメンテナンスで、垂木の劣化を防ぎ、屋根の長持ちを実現できます。

2-2. 野地板(のじいた)

野地板は垂木の上に敷設される屋根の基礎部材です。一定の間隔で配置された垂木を連結し、その上に屋根材を載せるための下地となります。一般的な野地板の耐用年数は20年から30年程度と言われていますが、経年変化による劣化が進めば交換工事が必要になり、それなりの費用負担が発生する可能性があります。

2-3. 防水紙(ルーフィング)

防水紙は、屋根の下地となる野地板の上に敷設される重要な部材です。この防水紙が雨水の浸入を防ぎ、屋根裏への雨漏りを確実に防止します。一般的な防水紙の種類には、アスファルト質のシートを使用したアスファルトルーフィングと、合成ゴムや合成樹脂を混ぜ込んだゴムアスルーフィングがあります。適切な防水紙を選択し、しっかりと施工することが屋根の長寿命化につながります。

 

03 一般的な屋根材の種類

住宅の屋根には様々な素材が使われており、それぞれ特徴が異なります。主な屋根材の種類とその特徴を以下に示します。

セメント瓦は、セメントと砂を固めて瓦状に成形した屋根材で、昔から広く使われてきました。重量があり、耐久性に優れる一方で、価格が高めです。

スレートは、セメントと繊維素材を混ぜ合わせて薄い板状に加工した屋根材です。デザインやカラーバリエーションが豊富なのが特徴で、近年の住宅によく使われています。

ガルバリウム鋼板は、アルミニウム、亜鉛、シリコンで構成された金属製の屋根材で、錆びにくいのが大きな利点です。軽量で施工が容易なことから、広く普及しています。

ジンカリウム鋼板は、ガルバリウム鋼板の表面に細かい石粒をコーティングしたもので、さらに耐久性が高まっています。ただし重量が増すデメリットもあります。

アスファルトシングルは、ガラス繊維の基盤にアスファルトをコーティングした屋根材で、アメリカの住宅で多く使われています。防水性と施工の容易さが特徴です。

トタン板は、亜鉛メッキ鋼板の屋根材で、軽量で安価という利点がありますが、近年はガルバリウム鋼板に置き換わる傾向にあります。

3-1. セメント瓦

セメント瓦は、セメントと砂を混ぜ合わせて瓦の形状に固めた屋根材料です。かつては一般的な住宅で広く使用されていた屋根材で、耐久性が高く価格も手頃なことから人気がありました。近年では、デザイン性の高いセメント瓦も登場し、多彩な形状やカラーバリエーションが楽しめるようになっています。経年劣化に強く、メンテナンスが比較的簡単なことも特徴的です。

3-2. スレート

スレートは、セメントと繊維質の材料を混ぜ合わせて成形した薄い板状の屋根材料です。長期間の使用に耐えうる優れた耐久性を持ち、様々な色やデザインのバリエーションが用意されているのが大きな魅力となっています。住宅用の屋根材としてよく使われており、落ち着いた風合いと洗練された外観が特徴的です。適切なメンテナンスを行えば、長期間にわたり美しい屋根を保つことができます。

3-3. ガルバリウム鋼板

ガルバリウム鋼板は、アルミニウム、亜鉛、シリコンを主成分とする合金製の屋根材料です。金属製ながら優れた耐食性を備え、錆びにくいのが大きな特長です。軽量で加工性に優れているため、施工が容易であることから、近年の住宅で広く採用されています。適切なメンテナンスを行えば長期間にわたり使用できますが、長期間の使用により変色や剥がれが生じる可能性があります。

3-4. ジンカリウム鋼板

ジンカリウム鋼板は、ガルバリウム鋼板の表面に細かな石粒をコーティングした屋根材料です。この石粒のコーティングにより、ガルバリウム鋼板に比べて耐傷性や耐久性が向上しています。しかし一方で、石粒の重みで重量が増すため、施工が若干手間がかかるというデメリットもあります。ジンカリウム鋼板は、ガルバリウム鋼板の長所を生かしつつ、耐久性をさらに高めた屋根材料と言えるでしょう。

3-5. アスファルトシングル

アスファルトシングルは、ガラス繊維の基盤にアスファルトを表面にコーティングした屋根材料です。この屋根材は、主にアメリカの住宅で広く採用されています。アスファルトシングルは耐久性と防水性に優れており、シングル状の形状で重ね葺きされるため、様々な屋根の形状に対応できます。また、多彩なカラーバリエーションがあり、デザイン性の高い屋根を実現することができます。

3-6. トタン板

トタン板は亜鉛めっき鋼板を素材とした軽量で低コストな屋根材です。かつては一般住宅でも広く採用されていましたが、近年ではガルバリウム鋼板に置き換わる傾向にあります。トタン板の最大の利点は施工の簡便さと初期コストの安さにありますが、一方で耐用年数が比較的短く、10年から20年程度で錆びが発生し始めるデメリットがあります。適切な錆止め塗装を施すことで寿命を延ばすことができますが、ガルバリウム鋼板に比べると手間とコストがかかります。現在では主に小規模な物置などの屋根材として使用されることが多くなっています。

 

04 まとめ

屋根は複雑な構造をしているため、部位ごとに多数の名称があり、部材の名称と混同されがちです。しかし、主要な用語を理解しておけば、見積書の内容を正確に把握することができます。専門用語を学ぶことで、屋根工事の内容を正しく理解し、適切な判断を下すことができるようになります。経年劣化が進んだ屋根の修繕や葺き替えを検討する際は、外壁塗装と同時に行うと、同じ足場を利用できるため、コストを抑えられます。