屋根の種類と形状を徹底解説!
素材と形状の特徴を比較

INDEX目次

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01 屋根の素材による種類と特徴

煙突付きの屋根

屋根の素材には様々な種類があり、それぞれ長所と短所があります。住宅の構造や設計、立地環境に合わせて適切な素材を選ぶことが重要です。ここでは代表的な9種類の屋根材について、その特徴や価格相場、耐用年数、メンテナンス方法などを詳しく解説します。

屋根は住宅の顔ともいえる重要な部分です。素材の選び方を誤ると、将来的に大掛かりな修繕工事が必要になる可能性があります。初期費用だけでなく、メンテナンスコストやリフォーム費用なども考慮に入れて、総合的に判断することをおすすめします。また、屋根の状態を自身で確認するのは危険が伴うため、専門業者に定期点検を依頼するのが賢明です。

1-1. 天然スレート

天然スレートは、石灰岩や粘板岩などの天然石材を薄く割り、加工して作られた屋根材です。人工的なスレート屋根材とは異なり、自然の風合いと質感を持つのが特徴です。耐久性に優れ、100年以上の長期にわたって使用できるのが魅力的です。また、独特の色合いやテクスチャーがデザイン性の高さにつながっています。

天然スレートは高級な素材ゆえに価格が高めですが、メンテナンスフリーで長期間使用できるため、トータルコストを考えるとコストパフォーマンスに優れています。一方で重量があるため、新築の場合は構造計算が必要になります。また、専門的な施工技術を要するため、施工費用が高くなる傾向にあります。

自然素材ならではの風合いを求める方や、長期的なコストパフォーマンスを重視する方におすすめの屋根材です。

1-2. 焼き物の粘土瓦

焼き物の粘土瓦は、日本の伝統的な住宅に多く採用されてきた屋根材です。粘土を焼成して作られるため、耐火性と防音性に優れています。夏場は屋根裏の空気を冷やし、冬場は暖かい空気を屋内に閉じ込めるため、快適な室内環境を実現します。

施工は手間がかかり、職人の技術が必要とされるため、初期費用は比較的高額になります。しかし一方で、焼き物の粘土瓦はメンテナンスフリーで、長期間にわたり美しい外観を保つことができます。近年は軽量化が進み、従来の重量による課題も解消されつつあります。

台風や地震による衝撃で破損するリスクがあり、落下による二次被害にも注意が必要です。強風対策や耐震補強を行いたい場合は、他の屋根材を検討するのが賢明でしょう。

1-3. 軽量で丈夫なセメント瓦

セメント瓦は、セメントと砂を混ぜ合わせて成形された屋根材です。軽量ながら丈夫な作りが特徴で、様々な形状やカラーバリエーションに対応できます。燃えにくいセメント製のため、耐火性に優れています。一方で定期的な塗装メンテナンスが必要となりますが、価格が比較的リーズナブルなのが魅力です。台風や地震による衝撃に弱い面もありますが、メンテナンスを怠らなければ長期間使用できる実用的な屋根材です。

1-4. 錆びにくいガルバリウム鋼板

ガルバリウム鋼板は、アルミニウムと亜鉛を主成分とする合金製の屋根材料です。アルミニウムの優れた耐食性と亜鉛の防食効果により、金属屋根の中でも特に錆びにくい長所があります。また、軽量で加工性に優れているため、屋根の形状を選ばず施工が可能です。近年では既存のスレート屋根にガルバリウム鋼板を重ねるカバー工法によるリフォームが増えています。メンテナンスを適切に行えば、25年から30年程度の長期間使用できる実用的な屋根材料です。一方で、金属製のため断熱性や遮音性が低いデメリットもあり、下地工事での対策が必要になります。

1-5. 耐食性に優れたジンカリウム鋼板

ジンカリウム鋼板は、ガルバリウム鋼板と同じアルミニウムと亜鉛の合金で構成された金属屋根材料です。その表面に石粒をコーティングすることで、耐食性が高まり塩害に強くなります。また、石粒が熱や音を遮断するため、断熱性と防音性にも優れています。軽量ながら耐震性も備えた屋根材です。

一方で価格が比較的高めなのが難点です。国内生産が限られており、輸入品に頼らざるを得ないケースが多いためです。しかし、メーカーによっては30年以上の長期保証がついており、基本的にメンテナンスが不要なのが大きな利点です。色あせやへこみ、キズなどが生じた場合のみ、補修を行えば長期間使用できます。

1-6. リーズナブルなトタン屋根

トタン屋根は鉄板に亜鉛メッキを施した安価な屋根材で、1955年から1973年の高度経済成長期に多く使われていました。軽量で施工が容易なため、初期費用を抑えられる点が最大の利点です。しかし、サビや色あせ、塗膜の剥がれなどが起こりやすく、5年ごとの塗り替えが必要になります。また、熱の伝導率が高いため夏場は屋根が熱くなり、冷暖房費の増加が避けられません。雨音も気になる方が多いでしょう。耐用年数は10年から20年程度と短めですが、工場や倉庫向けの屋根材として現在も使われています。初期費用を重視する一方で、メンテナンスコストを考えるとリーズナブルとは言い難い面もあります。

1-7. 防水性と施工性に優れたアスファルトシングル

アスファルトシングルは、ガラス繊維の芯材にアスファルト質の防水層を塗布し、さらに表面に小石を散布した3層構造の屋根材です。厚さは約6mmと軽量ながら、柔軟性が高く複雑な形状の屋根にも対応できます。石粒が緩衝材となり、優れた防水性と防音性を発揮します。

北米では80%以上のシェアを持つ人気の屋根材ですが、日本での普及はまだ始まったばかりです。そのため、施工に精通した業者が少なく、再塗装時のムラなどの品質管理が課題となっています。また、勾配が緩い屋根では水分が滞留しやすく、庭木の影響や風通しの悪さによりコケや藻が発生するリスクがあります。

価格は3,500円/㎡から16,000円/㎡程度と幅がありますが、耐用年数は20年から30年と長めです。メーカーによっては30年間無補修を謳う製品もあれば、10年から15年を目安に再塗装を推奨するメーカーもあり、立地環境によって対応が分かれます。

1-8. 高級感のある銅板屋根

銅板は古くから神社仏閣などの和風建築物に使用されてきた高級素材です。緑青色の重厚な風合いが特徴的で、年月を重ねるごとに味わいを増していきます。寿命は60年以上と非常に長く、軽量ながら柔軟性に富むため、カーブを描いた屋根にも対応可能です。一方で価格が高額なことや、施工できる業者が限られているのが課題です。ヘコミが生じる可能性もあり、一部補修が必要になる場合があります。基本的にメンテナンスフリーですが、ヘコミなどのダメージが目立つ場合は補修を検討する必要があります。

1-9. メンテナンス性に優れたステンレス屋根

ステンレス屋根は、鉄を主成分とし、クロムやニッケルなどの合金を含む金属製の屋根材です。キッチンなどでおなじみの素材で、軽量かつサビに強いのが最大の特長です。ガルバリウム鋼板よりも耐久性に優れており、塩害の多い地域や、コストを度外視して耐久性を重視したい場合におすすめです。

一方で断熱性と防音性が低いため、下地材で対策を講じる必要があります。熟練の加工技術を要するため、施工単価は高めになる傾向にあります。ステンレスはサビに強い素材ですが、絶対にサビないわけではありません。他の金属から「もらい錆」が発生したり、紫外線や経年劣化で色褪せが生じる可能性もあるため、定期的な点検は欠かせません。

ステンレス屋根材の価格は1平方メートルあたり10,000円から14,000円程度で、耐用年数は50年と言われています。塗装されているため、色褪せが気になる場合は10年から15年おきに再塗装を検討しましょう。メンテナンス性に優れた高級な屋根材として、近年人気が高まっています。

 

02 形状による屋根の種類

雲と屋根

切妻屋根は最もポピュラーな形状で、2方向に傾斜しているため雨水の排水性に優れています。施工経験の豊富な職人が多く、和洋を問わず幅広い住宅に採用されています。一方の寄棟屋根は4方向に傾斜しているため、どの方向からの風雨にも強い耐風性を持っています。ただし屋根面積が広くなるため費用が高くなる傾向にあります。

近年人気の片流れ屋根は棟から一方向にのみ傾斜しているため、妻側の外壁が風雨に曝されやすく劣化が早まるリスクがあります。一方で勾配のあるデザイン性の高さが魅力です。方形屋根は4面で雨風を分散するピラミッド形状のため耐風性に優れていますが、棟が多いため雨漏りのリスクも高くなります。

2-1. 一般的な切妻屋根

切妻屋根は三角形の屋根で、2面が傾斜している最も一般的な形状です。雨水の排水性に優れているため、水による腐食や劣化の影響を受けにくいメリットがあります。和風住宅や洋風住宅のどちらにも馴染むデザインなので、多くの一般住宅で採用されています。施工実績が豊富な職人が多数いるため、切妻屋根の施工は比較的容易です。屋根の形状が単純なため、メンテナンスも行いやすいのが特徴的です。

2-2. 和風の寄棟屋根

寄棟屋根は4方向に傾斜した和風の屋根形状で、切妻屋根よりも日射や風雨を効果的に防ぐことができます。4面で風雨を分散するため、耐風性に優れており、台風の多い日本の気候に適した形状です。しかし、風通しや換気が悪く、屋根面積が広くなるため、コストがかさむデメリットもあります。複雑な形状のため、施工には熟練の技術を要します。立地条件や費用対効果を考慮し、適切な屋根形状を選ぶことが重要です。

2-3. 勾配のある片流れ屋根

片流れ屋根は近年人気が高まっているデザイン性の高い屋根形状です。棟から一方向にのみ傾斜しているため、妻側の外壁が風雨や紫外線にさらされやすく、立地条件によっては外壁の劣化が早まる可能性があります。一方で、勾配のある屋根は視覚的に開放感があり、モダンなデザインとして好まれています。また、パラペットを3方向に設置した家屋も増えており、個性的な外観を演出できます。ただし屋根裏部分の有効活用が難しくなるため、収納スペースの確保が課題となる場合があります。

2-4. 四角い方形屋根

方形屋根は家の中心を頂点とし、4方向に均等に傾斜した屋根です。この形状は雨風を4面で分散できるため、耐風性に優れています。しかし一方で、棟の数が多いため雨漏りのリスクが高まる懸念があります。また、屋根面がすべて三角形で構成されているため、将来的に太陽光パネルを設置する場合は設置可能面積が限られてしまう点にも注意が必要です。デザイン性は高いものの、メンテナンスには細心の注意を払う必要があるでしょう。

2-5. 和風の入母屋屋根

入母屋屋根は切妻屋根と寄棟屋根を組み合わせた伝統的な和風の屋根形状です。4方向に傾斜しているため、雨水の排水性に優れ、屋根裏部分の通気も良好です。また、複雑な形状から断熱性能も高く、夏は涼しく冬は暖かい室内環境を実現できます。一方で、施工が複雑なため手間がかかり、費用が高くなる傾向にあります。さらに、屋根の継ぎ目が多いため、雨漏りのリスクも高くなるデメリットがあります。定期的なメンテナンスと点検が欠かせません。

2-6. 玄関を強調する招き屋根

招き屋根は、玄関前面に設けられる2段構造の屋根です。主屋根の一部を差し渡して作られるこの形状は、玄関部分を視覚的に強調する効果があります。また、雨風を分散させる形状のため、耐風性に優れています。さらに、屋根と屋根の間に空間ができるため、通気性や断熱性の確保にも適しています。

一方で、2つの屋根がぶつかる境界線付近には雨水が溜まりやすく、そこから雨漏りが発生するリスクがあります。定期的な点検と適切なメンテナンスが欠かせません。また、複雑な形状のため施工が難しく、コストが高くなる傾向にあります。雨風が強い地域や、玄関を目立たせたい住宅に適した屋根形状と言えるでしょう。

2-7. 伝統的なはかま腰屋根

はかま腰屋根は切妻屋根の棟部分を平らにカットした形状の屋根です。この形状は道路斜線規制や建物高さ制限に適合させるために採用されることが多く、間取りを確保しつつ規制をクリアできる点が利点です。和風住宅よりも洋風住宅で見られる機会が多く、近年人気が高まっています。

一方で、棟部分が増えるため雨水の流れが滞りやすく、雨漏りのリスクが高くなるデメリットがあります。また、棟部分の構造が複雑になるため、施工コストが上がる傾向にあります。定期的なメンテナンスと点検が欠かせず、漏水対策には十分な注意が必要となります。

2-8. フラットな陸屋根

陸屋根は、マンション等の集合住宅や事務所ビルなどの鉄骨造建築物に多く採用される平面状の屋根です。勾配がないため、雨水の排水が円滑に行われにくく、屋根面に水が溜まりやすいデメリットがあります。そのため、定期的な清掃と排水口の点検が欠かせません。一方で、屋上を有効活用できる点が大きな利点です。ベランダやテラス、屋上庭園などのスペースとして活用できるほか、太陽光パネルの設置も容易です。また、落雷の心配が少ないのも陸屋根の特徴です。メンテナンスが手間がかかる分、初期コストを抑えられるのも魅力的です。ただし、紫外線や風雨の影響を直接受けるため、屋根材の劣化が進行しやすく、10年程度を目安に塗り替えが必要となります。