「ここ10年、平屋がブーム」は本当?!
子育て世代も注目する1階建ての魅力とは?
- 住まい
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レトロな暮らしのイメージが強かった「平屋」が、近年は住まいのトレンドとして脚光を浴びています。特に子育て世代にとって、ワンフロアの間取りによる動線の良さや耐震性の高さが大きな魅力に。コの字型やサーファーズハウスといったデザイン性の高い平屋が続々登場している点も追い風となっています。一方で、平屋の実現には土地選びや資金計画など、2階建てとは異なるポイントが。今回は平屋ブームの検証とともにメリット・デメリットについてご紹介します。
01 多い?少ない? 新築住宅のうち、平屋は15%
地価の高い都心において新築の平屋はレアケースですが、郊外や新興住宅地では平屋が目立って増えてきました。国土交通省「建築着工統計調査」を見ると、データからも平屋トレンドはくっきり。2023年度の平屋着工数は5万7848棟で、2013年度から2万棟も増加。着工した住宅のうち、平屋が占める割合は15%になりました。まだ1割ちょっととはいえ、2013年度の平屋率7.4%と比べると2倍に伸びていて、この10年で平屋のニーズが高まっていることがわかります。
【居住専用住宅の着工棟数】
2013年度 平屋37,248棟 平屋の割合7.4%
2023年度 平屋57,848棟 平屋の割合15.0%
(出典:国土交通省「建築着工統計調査/建築物着工統計」、集合住宅も含む)
平屋ブームは「南高北低」。新築住宅の半数が平屋という県も!
実は、平屋トレンドには都道府県による顕著な差がありました。同調査によると、平屋の割合は宮崎県と鹿児島県でなんと50%以上。九州で平屋率が高い傾向です。平屋が少ないのは東京都と神奈川県で、平屋率1~2%台と大きな開きが。平屋ブームにはエリア性があると言えます。
【居住専用住宅における平屋の割合】
1位 宮崎県 55.8% 45位 大阪府 3.3%
2位 鹿児島県 53.6% 46位 神奈川県 2.7%
3位 香川県 39.9% 47位 東京都 1.5%
(出典:国土交通省「建築着工統計調査/建築物着工統計」2023年度。集合住宅も含む)
02 子育て世代にとっての「平屋」の魅力。「家事ラクで家族との距離が近い
バリアフリーの平屋は、子育て世代にとって多くのメリットがあります。住まいの長寿命化が進む今、「老後の生活まで考えた」「子どもの巣立ち後に2階を使わなくなるのはもったいない」などの理由で平屋を選ぶ20~30代も。長期的な安心・快適も、堅実な若い世代の心に響いているようです。
メリット1 ワンフロアで家事ラク
平屋の魅力といえば、ワンフロアで暮らしが完結すること。毎日何往復もの上下移動がなくなれば、家事がラクになり時短にも役立ちます。その分、横に移動する距離が増えるため「回遊動線」を盛り込むのがオススメです。例えば、キッチン~水回り~ウォークインクロゼットをぐるりと回れる動線があると一筆書きで家事がこなせてストレスフリー。さらに、ロボット掃除機で家中を掃除できるスマートライフも叶います。
メリット2 子どもたちに目が届く
LDK・水回り・個室が隣接するため家族の気配が自然に伝わります。子どもが小さいうちは家事をしながら目が届きお互いに安心。部屋にこもりがちな思春期の子どもたちと生活動線上で自然に顔を合わせやすいのもメリットです。ゲストが多い家は、中庭や廊下を設けるとパブリックとプライベートゾーンをゆるやかに切り離すことができます。
メリット3 耐震性を確保しやすい
建物は高層になるほど、振り子のように地震の振動を受けやすくなります。その点、平屋は重心が低く、2階建てより総重量が軽いため、揺れの影響を抑えやすいと言えます。多層階に比べるとシンプルでバランスの取れた構造であることも、耐震性を高めやすい理由です。耐震面で優位とはいえ、数値の裏付けを求めるなら最高等級「耐震等級3」の性能を確保するといいでしょう。
03 家づくりの自由度も魅力。平屋は地味?!を覆すデザインが続々
上階がないため、大空間や大開口、中庭といった間取りの自由度が高く、平屋のデザインは格段に多様化しています。スタイリッシュで価格が明快な平屋規格住宅も増えていて、憧れの暮らしを取り入れやすくなりました。平屋ならではのデザインスタイルをご紹介します。
デザイン1 コの字型やロの字型の間取り
中庭を囲むコの字やロの字型の平屋は、人気が継続しているスタイル。中庭を設けて建物でぐるりと囲む構造のため、プライベート感がぐっとアップ。LDKと中庭を一体化して、面積以上の開放感を生み出すこともできます。視線が気になる住宅街や道路沿いの敷地の活用にも適したスタイルです。
デザイン2 サーファーズハウスなど多テイスト
平屋のオーソドックスなイメージを覆す外観デザインもブームを後押し。窓を最小限にして塗り壁で仕上げたミニマルな平屋、カバードポーチが彩るサーファーズハウス、平屋ガレージハウスなど、選択肢が広がりました。平屋は階段室が不要なため、その分を生活空間に充てることができ、延床20坪台のコンパクトな平屋も注目されています。
デザイン3 勾配天井やロフトの開放感
2階がないということは、タテ空間を自在に使えるということ。平屋の醍醐味といえば、屋根裏まで活用した「勾配天井」です。勾配天井のLDKは見上げるのが楽しく、開放感が抜群。天井高を生かしたロフトを設置すれば、秘密基地や収納としても活用できます。
04平屋は建築コストが割高になる?! 知っておきたいデメリット
平屋づくりは、土地選定や資金計画において2階建てよりも少々ハードルが高いです。平屋のデメリットもしっかり押さえておきましょう。
デメリット1 建てられる土地が限られる
平屋を建てるには一定の土地の広さが必要です。土地には敷地制限があり、仮に建ぺい率60%とすると「40坪の敷地に建てられるのは延床24坪までの平屋」ということに。このような敷地制限や駐車場を考慮すると、2階建てで検討していた土地では「平屋が建たない」ケースが多く見られます。また、洪水や内水氾濫が予測されるエリアでは、垂直避難のできない平屋は避けた方がベターです。市町村のハザードマップで浸水レベルを確認してください。
デメリット2 コストが2階建てより割高
意外かもしれませんが、同じ延床面積なら平屋の方が2階建てよりも建築費が高くなりやすいです。コストに差が出るのは、2階建てより屋根や基礎の面積が広がる分、屋根工事と基礎工事がかさむため。同じく建物の固定資産税も「建材が多く使われており資産価値が高い」と判断され、平屋の方が高くなる傾向にあります。
デメリット3 防犯や収納計画に配慮が必要
コンパクトな平屋で気をつけたいのが、収納不足。ムダを省いた間取りにすると動線上のちょっとした収納が減ることに。家の中心部に採光しづらいという平屋のネックを逆に活用して、真ん中に大型収納を配置するのも一手です。また、プライバシーと防犯面に配慮した窓設計が重要。掃き出し窓にはシャッターを設ける、人が侵入できないスリット窓を多用する設計で、採光・通風と防犯を両立することができます。
05日本の暮らしの知恵が息づく平屋は、どの世代にも心地いい
いかがでしたか?平屋が人気を呼んでいる理由がおわかりいただけたでしょうか?子育てにも老後の暮らしにもマッチする平屋は、まさに住まいの原点。ウチとソトがつながる日本らしい暮らしが叶い、限られた面積でも広くのびやかに暮らすことができます。壁やドアなどの間仕切りを極力減らすことで「1つのエアコンで家全体を空調しやすい」点も、日本の知恵といえるでしょう。伝統的な暮らしに今ドキのデザイン・性能を融合させたハイブリッドな平屋ライフに、ぜひ注目してみませんか。