バリアフリー住宅にリフォームするには?
減税や補助金も利用できる?
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INDEX目次
執筆:住宅ジャーナリスト
福岡 由美(FP技能士・住宅ローンアドバイザー)
20代の頃、自身の住まい購入をきっかけに住宅ジャーナリストとしての活動をスタート。
東京・名古屋を拠点に全国で取材活動を行っており、住宅情報サイト等にレポートを寄稿。
取材歴25年、取材物件数は2000物件を超える。
「交通事故よりも家庭内事故の方が多い」と耳にしたことはありませんか?平成30年版高齢社会白書によると、65歳以上の家庭内事故は77%。一般道路や民間施設内の事故は10%以下とのデータがあり、実は「マイホームの中の危険度」のほうがダントツに高いことがわかります。老後も住み慣れたわが家で安心して暮らすためには、早い段階で住宅のバリアフリー化を検討することが大事。そこで今回はバリアフリーリフォームのポイントや利用できる補助金、減税制度について解説します。
01 家庭内で最もリスクが高いのは「居室」。バリアフリー化はどのように進めればいい?
同白書によると、65歳以上の方の家庭内事故でもっとも多い場所は、意外にも「居室」45%。つづいて「階段」18.7%、「台所・食堂」17%となり、つい油断してしまう場所にバリア(障壁)が潜んでいるといえます。では、具体的にどのような改修を行うと良いのでしょうか?
居室(寝室)
生活動線上に手すりを設置し、段差があれば解消を。床材は滑りにくく、車いすや杖をついても傷みにくいフローリング材やコルク材、クッションフロアを選ぶと良いでしょう。出入口は力がなくても開閉しやすい引き戸に変更し、夜中にトイレへ行く際に足下を照らす人感センサーライトを採用するのもおすすめ。寝室をLDKやトイレと隣接させた平屋風の動線にすると、より安心です。
玄関
玄関の上がり框には、動作を支える縦型やL字型手すりを設置。上がり框を低くし、靴を脱着しやすいベンチを設けると、外出が億劫になりません。玄関に車いす用のスロープを設置しづらい場合は、LDKを出入り口にしてスロープを設置する方法も。スロープは勾配や幅が適切でないとかえって危険なので、見栄えよりも介護の視点で施工しましょう。
廊下・階段
車いすでスムーズに通行するには、手すり幅+90センチのゆとりを確保するのが理想的。車いすをその場で回転させるには直径150センチの空間が必要になるので、直線的に移動できる動線や廊下のないオープンな間取りにすると、車いす移動がスムーズに行えます。
なお、高齢者の家庭内事故で2番目に多いのが「階段」。手すりは降りる時の利き手側に設置し、足下に滑り止めやライトの導入を。リフォームによって勾配をなだらかにすることもできます。
トイレ
手すりの設置と、引き戸への交換が望ましい改修。外開きドアは開ける際に1歩下がる必要があり、内開きドアは中で家族が倒れてしまうと開けられません。その点、引き戸なら動作や力が少なくてもすみます。さらに便器の横側を引き戸にすると、車いすからの移動や介助も楽々。大開口ができる3枚引き戸といった介護用ドアも登場しています。
浴室
浴室の主なリスクは、転倒とヒートショックです。手すりを設置し、滑りにくい床材に変更して、出入り口に段差があればなるべく低めに。ドアは引き戸、浴槽はまたいで入りやすい浅めのタイプや浴槽のふちに腰かけられるタイプを選ぶと安心です。室温差によるヒートショックを防ぐために、浴室や洗面室の断熱にもしっかり配慮しましょう。
02 バリアフリーリフォームを行うと、「補助金」が受け取れることも!
一定の要件を満たしたバリアフリー改修を行うと、補助金や減税制度が利用できることがあります。主なサポートとして、3つの補助金と減税制度を紹介します。
その1 介護保険の「住宅改修 補助金」が最大18万円!
「要支援1・2、要介護1~5」に認定され、手すりやドアの改修などを進めたいときには、「介護保険制度の補助金」が利用できます。事前申請が必要ですので、工事前にケアマネジャーに相談しましょう。
支給額
支給限度額はひとり生涯20万円までで、最大18万円給付されます(所得により1割~3割を自己負担)。1回の改修費が20万円に満たなければ分割利用が可能です。また、要介護度が3段階以上あがった場合や、転居した場合は、再び上限まで支給が受けられます。なお、支給の対象は住宅ではなく個人となるため、「父が補助金を利用した後、母が要介護認定を受けた」といったケースでも、同じ自宅で補助金を利用できることがあります。
対象となる改修工事
(1)手すりの取り付け
(2)段差の解消
(3)滑り防止や移動の円滑化などのための床・通路の材料変更
(4)引き戸等への扉の取り替え
(5)洋式便器等への便器の取替え
(6)上記に付帯して必要な住宅改修
このほか、独自の補助を行っている都道府県や市町村もあります。各自治体のホームページなどで確認してみてください。
03 バリアフリーリフォームで、「所得税」「固定資産税」が減税になる?!
その2 バリアフリーリフォームで、「所得税」が減税に
バリアフリー改修工事で所得税を減税するには、「住宅ローン控除」と「リフォーム促進税制」という2つの制度があり、併用はできません。今回はリフォームローンを組まない時にも利用できる「リフォーム促進税制」について紹介します。(適用は2025年12月31日まで)
最大控除額
居住用住宅でバリアフリー改修を行った場合、工事費用の10%が、1年分の所得税から控除されます。(対象工事限度額200万円、最大控除額は20万円)
対象となる改修工事
・通路・出入口幅の拡幅
・階段の勾配の緩和
・浴室の改良
・トイレの改良
・手すりの取り付け
・段差の解消
・出入り口の戸の改良
・床材料の取り替え
リフォームを行う方が「50歳以上、要介護か要支援認定を受けている方、障がいをお持ちの方、高齢者等である親族と同居している方」のいずれかを満たすことや、面積や居住などの要件がありますので、詳細は国土交通省ホームページで確認を。なお、控除を受けるには確定申告が必要となります。
※出典:国土交通省「バリアフリー改修に係る所得税額の特別控除」
その3 バリアフリーリフォームで、「固定資産税」が減額に
一定のバリアフリー改修工事を行うと、翌年度分の「建物の固定資産税」が3分の1に減額される制度もあります。新築された日から10年以上経過した住宅で、65歳以上の方が居住、などの要件がありますので確認してみましょう。減額を受けるには、工事完了日から3カ月以内に市区町村へ申告してください。(適用は2026年3月31日まで)
※出典:国土交通省「住宅のリフォームに係る税の特例措置」
※上記の制度は2024年4月現在の情報です。
04 バリアフリー化で、住まいを「一番危険な場所」から「一番心安らぐ場所」へ
年齢を重ねても「自分はまだまだ元気」という意識を持っている方が多いため、家庭内に潜む身近な危険をついつい見落としがち。「家で転倒で足腰を痛め、介護が必要になり、慌ててリフォームを検討する」というのはよくあるケースです。適切な場所に手すりがあり、段差が少なく、軽い力でドアが開閉できる“バリアフリーな住まい“は、介護を必要としない方にとっても安全な生活空間となります。ぜひ元気な時にこそリフォームの重要性を見直し、制度を把握した上で賢く検討してみてはいかがでしょうか?